タイにおける商標ファストトラック制度:登録手続の迅速化

2025/03/19
タイ商標

著者

Pollawat Suppattarasaet, Partner
Thanat Pitanon, Senior Associate

IP@ilawasia.com

タイの法律では、法人にその代表者として行動する法定代理人(legal representative)を置く必要があると定められています。さらに、その代理人の責任に関する規定も法律上に設けられており、以下のように分類されます。タイの知的財産局(DIP)は、迅速な商標保護を求める企業のニーズに対応するため、商標登録のファストトラック制度を導入しました。この制度は、行政手続を簡素化し、審査期間を短縮することで、商標登録の全体的な効率性を向上させることを目的としています。この取り組みにより、タイ国内外の出願人にとって、より迅速に商標権を取得する手段が提供され、事業展開のスピードアップとブランド保護が強化されることとなります。

 

ファストトラック制度の主な特徴

 

A. 審査期間の迅速化

通常の手続きの場合、商標登録には12か月から18か月程度を要します。しかし、ファストトラック制度を利用することで、審査期間が大幅に短縮され、6〜8か月以内に審査が完了する申請もあります。

 

B. ファストトラック審査の適用要件

ファストトラック制度を利用するには、出願人がタイ知的財産局(DIP)により定められた以下の条件をすべて満たす必要があります。

 

    1. 出願はDIPの電子出願システム(e-filing)を通じて行うこと
    2. 指定商品・役務の数は50項目以内であり、かつDIPがあらかじめ承認した用語リストに準拠していること
    3. 審査過程において、出願内容の修正や補足説明を要しないこと
    4. DIPからの通知や補正指示等に対して迅速に対応すること

  1.  

C. ファストトラックによる商標更新手続

初回登録だけでなく、商標の更新手続についても、タイ知的財産局(DIP)はファストトラック制度を導入しています。主な適用条件は以下のとおりです。

    1. 商標の有効期限満了の少なくとも90日前までに更新申請を提出すること
    2. 更新申請において、商標や登録内容の変更を伴わないこと
    3. 申請時に手数料が全額支払われていること
    4. 従来の制度では数か月かかっていた更新手続が、ファストトラックでは45日以内に完了可能

 

ファストトラック制度の利点

 

A. 時間の効率化:処理期間の短縮により、企業はより早く商標権を取得でき、迅速に権利行使が可能となります。

B. コスト削減:手続きが簡素化されることで、長期化による事務手続コストや法的費用の発生リスクが軽減されます。

C. ブランド保護の強化:早期の商標登録が可能になることで、企業は商標侵害から自社ブランドを初期段階から守ることができます。

D. 外国投資の促進:効率的な登録制度により、知的財産保護を重視する外国企業にとって、タイはより魅力的な市場となります。

 

制限事項および留意点

 

ファストトラック制度には多くの利点がありますが、出願人は以下の点に留意する必要があります:

 

A. 保護範囲の限定:商品・役務の指定は事前承認済みリストから選択する必要があるため、ビジネスによっては保護範囲が制限される可能性があります。

B. 修正不可:審査過程で出願内容の修正や補正が必要となった場合、当該申請はファストトラックの対象から除外されます。

C. 複雑な案件は対象外:異議申立て、紛争、その他争点を含む申請は、ファストトラック制度の適用対象外となります。

 

結論

 

タイのファストトラック商標制度は、同国の知的財産制度の近代化に向けた重要な一歩です。登録および更新手続を迅速化することで、タイ知的財産局(DIP)は、企業がより効率的に商標権を取得・維持できるよう支援しています。

 

この制度の恩恵を受けたい企業は、ファストトラックの適用要件を正確に理解し、これを遵守する必要があります。また、円滑な申請手続のためには、知的財産に精通した法律専門家のサポートを受けることが強く推奨されます。

 

出典

    • タイ知的財産局(DIP)公式ウェブサイト

    • タイ商標法(最新改正)

    • DIPによるファストトラック登録に関する最新発表