高齢者および介護事業におけるビジネスチャンスの開拓

2025/01/31

著者

Tanadee Pantumkomon, Partner
Thanaphorn Kaewsukko, Associate
Kornkod Suk-aram, Associate

info@ilawasia.com

タイ国家統計局によると、タイは2024年に正式に「高齢化社会」へと突入しました。この動向は、国連の報告書において指摘されている世界的な人口高齢化のトレンドとも一致しています。

健康・ウェルネス分野の主要拠点として知られるタイでは、健康関連サービスへの需要が年々増加しています。こうした社会の変化に対応し、新たなビジネス機会を創出するため、タイ政府は高齢者支援に向けた魅力的なインセンティブ制度を導入しました。これらの施策は、人口動態の変化に適応しつつ、急成長が見込まれる高齢者および介護事業への投資を促進することを目的としています。

以下に、これらの施策の主要ポイントをまとめます。

1. ライセンス(許認可)

高齢者および要介護者向けの事業(デイケアセンター、高齢者向け住宅、介護施設を含む)は、「高齢者または要介護者のケア事業」(以下、「本事業」という。)と法的に定義されています。本事業を運営するためには、「健康関連事業施設法(B.E. 2559(西暦2016年))およびその改正法」に基づき、ライセンス(許可)の取得が義務付けられています。

さらに、本事業は、「高齢者または要介護者のケア事業を健康関連事業施設として指定する大臣令(B.E. 25632020年〉)」(以下、「本大臣令」という。)の規制対象となります。

本大臣令により、本事業は以下の3つのカテゴリーに分類されます。

Noカテゴリー基準
1デイケア Day Care高齢者または要介護者向けに、日中のケアサービスを提供する事業。健康の維持・増進・リハビリを目的とした活動を含むが、宿泊を伴わない
2高齢者向け住宅(Residential Home高齢者向けに居住施設を提供し、健康の維持・増進・リハビリを目的とした活動を行う事業。
3介護付き住宅(Nursing Home高齢者または要介護者向けに、ケアおよび支援を提供する事業。健康の維持・増進・リハビリを目的とした活動を含み、宿泊を伴う。

各カテゴリーにおいて、事業者は特定の要件を遵守する必要があります。特に、宿泊施設や居住サービスを提供する事業では、安全対策の強化が求められます。また、ライセンス取得費用は、提供するサービスの種類や施設の規模(平方メートル単位で算出)によって異なります。

必要なライセンスを取得するためには、公衆衛生省・医療支援局の医療支援センターに申請書を提出する必要があります。

2. 外資系企業に対する追加要件

タイの外国人事業法(B.E. 2542(西暦1999年)、以下「FBA」という。)の規定により、外国法に基づき設立された企業およびタイ法に基づき設立された企業で、外国人株主が50%以上の株式を保有する企業のいずれかに該当する企業は「外国企業」に該当します。

医療・介護事業は、FBA の「リスト3」に分類されており、外国企業がこの事業を運営するためには、商務省(MOC)事業開発局(DBD)の外国企業事業管理課の許可を取得する必要があります。

3. 投資奨励

1. 高齢者および要介護者向け事業に関する特別基準

タイ投資委員会(BOI)は、高齢者および要介護者向け事業の運営基準を定めた「BOI公告 第9/2565号」を発表し、対象となる企業に対する奨励を規定しています。運営基準の詳細は以下の通りです。

No.基準詳細
1国籍要件タイ国籍者が登録資本の51%以上の株式を保有すること
2事業目的高齢者または要介護者のケアを目的とする事業であること
3収容能力入院患者用ベッドを31床以上備えていること
4事業内容高齢者または要介護者のケアと支援を提供し、宿泊およびリハビリ活動を実施すること
5ライセンス恩典を受ける前および操業開始期限日までに、健康関連事業施設の営業許可を取得していること
6最低投資額土地および運転資金を除く最低投資額が100万バーツ以上であること。

2. 恩典の内容

BOI の基準を満たし、奨励を受ける企業は、以下の恩典を受けられます。

No.恩典の種類詳細
1法人所得税法人所得税を3年間免除
2輸入関税以下の対象品目に関する輸入関税を免除:
1) 機械類
2) 研究開発(R&D)に使用される原材料
3) 輸出用製品の生産に使用される原材料
3税金以外の恩典土地所有許可、熟練労働者や専門家の招聘許可、ビザおよび労働許可の優遇措置など

まとめ

世界的な高齢化社会の一員であり、ヘルス&ウェルネス分野で国際的に高い評価を受けるタイでは、健康関連サービスやウェルビーイング事業への需要が年々高まっています。この流れを支援するため、タイ政府は投資委員会(BOI)を通じて、高齢者および要介護者向け事業を含む成長分野に対し、法人所得税の免除、輸入関税の軽減、各種税金以外の恩典などの魅力的な支援策を提供しています。

一方で、外国企業は追加の運営要件を満たす必要があり、現行の制度上、恩典の適用対象外となっていますが、それでも本分野への参入機会は十分に存在します。また、事業者は、健康関連事業ライセンスの取得、安全対策や廃棄物管理に関する厳格な規制の遵守など、さまざまなライセンス要件や法的義務を満たす必要があります。

こうした課題があるものの、タイの人口動態の変化と強固なヘルス&ウェルネス市場を背景に、高齢者および要介護者向け事業は極めて高い投資ポテンシャルを持つ分野です。

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